今週のショウノミクス(Vol.54)は政府が進めている教育無償化を扱います。今回の高等教育無償化を皮切りに、数回に分けて幼児教育や高校授業料の無償化について議論します。
まず、住民税非課税世帯を対象とした国立大学の授業料を無料にする方針ですが、効果のほどは疑問に感じます。厳しい表現ですが、住民税非課税世帯の国公立大学への進学率が(全高校生の平均と比較して)どのくらいの割合なのか、を考慮すると、対象者の数はあまりにも少ないと思います。むしろ、もっと前の段階、すなわち小学校高学年位から高校にかけての補習授業や進学準備のための塾などを無償化すべき(モチベーション向上のための方策を含む)と思われます。
次に、住民税非課税世帯に対する私立大学授業については、(平均的な私立大学の授業料−国立大学の授業料)/2の額を国立大学授業料分に上乗せして給付する、との方針ですが、これも問題山積です。1点目はややもすると私学助成金に匹敵する額を補助することが果たして適当なのかということです。日本の私大の数は18歳人口に比べて多すぎると感じますし、現在私大の40%以上が定員割れを起こしており、経営や教育の質の向上に対する努力を怠っている組織も多く見受けられます。このような状況下での給付は、日本の教育に関する質の低下や国際的な競争力の低下につながるのではないかと思います。また、高卒後に就職する学生との不公平さ/不平等さが問題になると考えます(現在4年生大学への進学率は約53%です)。
私が考える対応策については稿を改めて論じますが、ただし生活費支援としての給付型奨学金の大幅拡充(国立自宅、国立下宿及び私大自宅、私大下宿の3つに区分して給付予定)は上記の無償化の対象とならない低所得者層にも配分されるため、それなりの効果はあるのではないか、と考えています。